EYコンサルティングの成長戦略
近藤聡社長インタビュー

サマリー

  • ・テクノロジー偏重の競合とは異なるマネジメントコンサルティング中心の成長戦略
  • ・収益性改善により報酬はマーケット標準にキャッチアップ
  • ・「育成のEY」として人材育成を深化

拡大するコンサルティング業界において近年一段と高い成長率を誇るEYコンサルティング。過去にはSI系プラクティスを買収したもののBig4の中では他社を追いかける位置に甘んじてきたが、近年は他ファームからも多くのパートナーが参画し、コンサルティング業界で大きな注目を集めている。その戦略について、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(以下、EYSC)を率いる近藤聡代表取締役社長に、EYSCの新入社員がインタビューを行った。

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年40%超の成長率を実現

――EYSCはコンサルティング業界の中では比較的新しく、急成長していると聞きますが、どのような成長の軌道をたどっているのですか。

EYというブランドでのコンサルティングは2000年代から日本に存在していましたが、Big4他社と比較するとその規模は小さい状況が続いていました。転機となったのは、2017年。EY Japanの複数部門に散らばっていたアドバイザリーサービスを統合する形でEYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社(現EYSC)が設立されたことを皮切りに、本格的にEYグローバルと連携したコンサルティング事業がスタートしました。

2019年にはEYグローバルからの投資を得て、プロジェクトドラゴンと呼ばれる成長計画を策定。コンサルティングのみならず新日本監査法人や、ストラテジー・アンド・トランザクションと呼ばれる戦略やM&Aを実行する部隊、及びEY税理士法人とも連携し、EY Japan全体で成長計画を実行してきました。これにより、コンサルティング事業においては国内売上(TNR)ベースでFY19に20%、FY20・FY21には二年連続で43%の成長を続けています。

テクノロジー偏重の競合とは異なるマネジメントコンサルティング中心の成長戦略

――そのような成長を実現する戦略はどのようなものですか?

DXブームもあり、競合他社にはテクノロジー関連コンサルティングのポートフォリオが全体の半数を超えている会社もありますが、EYは、テクノロジー偏重による規模の拡大のみを追うような成長は志向していません。もちろんデータやテクノロジーを活用した課題解決は大切ですのでその手法を高度化していきますが、成長戦略としてはあくまでマネジメントコンサルティングを中心に考えています。

目指す姿としては、マネジメントコンサルティングが75%(ビジネスコンサルティングが45%、リスクコンサルティングが20%、人事組織コンサルティングが10%)で、テクノロジーコンサルティングが25%とバランスの取れたポートフォリオを想定しています。

さらに言うと近年、企業の経営課題は気候変動や地政学上の問題、COVID-19による移動制限など、企業単独では解決できないような複雑なものが増えています。それらは当然EYだけで解決できるものではないので、私たちコンサルタントがハブとなり、政官学、NPO・NGO、経済界をつなぎ、課題解決を図っていくような長期的な価値創出のための動き方を志向しています。

――セクター別に見るとどのようなポートフォリオになっているのですか?

75%がコマーシャルセクター(非金融)で、25%が金融セクターです。金融ももちろん今後成長させていきますが、コマーシャルセクターがリードしていく部分が大きいです。規模で言うとTechnology, Media & Entertainment(TMT)セクターが大きく成長しています。

他方、成長度合いで言うと医薬・医療セクター(HS&W)が3か年で84%、公共・不動産セクター(G&RE)も60%の年成長率を達成する大躍進を遂げています。

TMT: Technology, Media & Entertainment, HS&W: Health Sciences & Wellness (医薬・医療), G&RE: Government & Real estate (公共・不動産), BCM/WAM: Banking and Capital Markets (銀行証券)/ Wealth and asset management (資産運用), AM&M: Advanced Manufacturing & Mobility(自動車・モビリティ・運輸・航空宇宙・製造・化学)

収益性改善により、報酬はマーケット標準にキャッチアップ

――具体的にはどのような改革を進めているのですか?

さまざまな改革を同時並行に進めています。まず報酬に関してですが、過去にEYは業界標準より低い水準にありましたが、それはここ1,2年でキャッチアップしてきています。専門領域によって多少の差はありますが、現在では競合他社と変わりない給与水準で、領域によっては他社を超えるオファーにより、トップティア人材の獲得が進んでいます。

それが可能となったのは、品質改善のための意識改革やトレーニングプログラムの拡充、評価プロセス・基盤の強化を同時に推進してきたことにあります。これにより、提供するサービスの品質を格段に向上させ、一人当たり売上も劇的に改善しています。

「育成のEY」として人材育成を深化

――このような改革の中で、現在の最優先課題は何ですか?

工場や商品があるわけではないコンサルティング会社にとって「人」がすべてですから、「人材育成」がトッププライオリティであり、最大の投資領域です。そのため第一線のパートナー、アソシエートパートナーが中心となり、研修環境や評価制度のインフラの再構築、そしてその運用をきめ細やかに行っています。

この一年で研修プログラムは刷新され、トップコンサルタントが企画・講師・運営支援を務める洗練されたものになりました。これによりプロフェッショナル個々人やチームの品質のばらつきをなくし、高度化を図っています。

また評価制度についても、単なるレーティングではなく、ランク別に定められているスキル定義に基づき、プロジェクトごとにメンバーのスキルチェックを実施、本人に改善ポイントをフィードバックする育成を重視したものに刷新しています。メンバーそれぞれに「カウンセラー」がアサインされ、中長期的なキャリア形成のための後押しもしています。

このようにきめ細やかな育成の実施には時間も労力もかかりますが、まさにパートナー、コンサルタント全員でコミットし、社会により良いインパクトを与えられる人材を輩出するために、最優先事項として進めているのです。

――そのような結果として、どのような「質的」変化が起きているのですか?

端的には、案件のバリエーションが増えました。最近ではSDGsやESG、脱炭素をテーマにした戦略系の案件も増えているほか、経済安全保障やサイバーセキュリティをテーマにした案件も扱っています。

また、「クライアントの反応が変わってきた」と言っているメンバーもいます。とあるスタッフから聞いて驚いたのは、「パートナーがクライアントへの報告会に出てプレゼンするのを初めて見た」といったコメントです。プロフェッショナルファームにおけるパートナーは自ら出資金を支払うオーナーの立場を有しますから、仕事そのものも全部自分でやるのが当然です。以前はそのような意識が希薄なパートナーもいたようですが、クライアントワークから経営まで、パートナーが当たり前に一通りこなすことで、クラアイントの反応も変わってきているのだと思います。

――なるほど。最後に、このように成長することで何を目指しているのですか?

私たちは成長すること自体を目的とは考えていません。EYはBuilding a better working world(より良い社会の構築を目指して)というパーパスを2013年から掲げ、グローバルで他社に先駆けて「パーパス経営」を推進してきました。日本でも今期、「経済で社会平和を、日本から。」というコンサルティング独自のビジョンを掲げました。これらを実行するためには、コンサルタントとして本物の課題解決ができる専門性と体力、基盤が必要です。そのためにもまずはトップクラスのファームのレベルに近づくこと。そうすることより多くのクライアントに貢献し、私たちのパーパスを実現していきたいと考えています。

――ありがとうございました。EYコンサルティングが大躍進を遂げている理由がわかりました。今後の変化もたいへん楽しみです。

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 代表取締役社長

近藤 聡

<経歴>
大手総合コンサルティングファームにて、自動車・ハイテク業界を中心に、企業戦略、オペレーション改革、海外展開戦略の策定・実行支援など、クロスボーダーを含むプロジェクトを数多く手掛ける。2011年より、同ファーム日本代表を務めるとともに、APACリーダーおよびグローバル・オペレーション・リーダーなどを歴任。2019年初めよりEY JapanにてJapan Regional Leadership Teamの一員として、EY Japanの成長戦略の立案から実行までを統括する。2020年10月、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会 代表取締役社長に就任。

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