EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EYSC)

 
2022.11.08
クロスセッション、パートナー

一気通貫で食の課題に挑む「食の未来創造支援オフィス」

パートナー 荻生 ディレクター 池尻

課題が山積する食の分野に挑むべく、これまでの産業別、機能別組織に加えて目指すべきゴールを起点とする「食の未来創造支援オフィス」が設立されました。クライアントに価値を提供するだけでなく、社会全体に大きなバリューをもたらすために、ユニットを超えて熱い志を持ったメンバーが集結しています。新組織にかける想いと展望を、共同リーダーの2人が語りました。

ゴールを見据えた新しいボーダレスな組織がスタート

──7月に「食の未来創造支援オフィス」が始動しました。設立の経緯を教えてください。

荻生 食料自給率やフードロスなど食に関する課題は多々ありますが、2022年現在のウクライナ・ロシアの問題や円安の影響で食品価格の高騰が顕著となり、国内では食に対する危機感が高まっています。一方、いまや企業にとって不可避の取り組みであるSDGsには食品関連の項目も多く、EYには食関連の相談が多数寄せられています。こうした背景をふまえて、一気通貫で食のビジネスの課題解決を目指す新たな組織が必要だと考えました。

食を取り巻くフィールドは多岐に渡ります。例えば生産ひとつを取っても、農業、漁業、畜産業と実に幅広い。こうした一次産業の見識に加えて、製造、流通、マーケティングなどバリューチェーンの各段階でのプロフェッショナルな知見も不可欠です。もはや単一の産業セクターやコンピテンシーではカバーできない課題が多く、さまざまなメンバーが一つの方向に向かって進むことができる旗印を掲げる必要性から生まれたのが「食の未来創造支援オフィス」です。

池尻 私が所属する公共・社会インフラセクターには、農林、水産、畜産の専門家がいますが、食の分野に関して言えば、単一のプレイヤーで解けない課題が多くなっていると感じます。さらに、テクノロジーの進化が非常に速くなっているという側面からも、食というテーマはオープンイノベーションの主戦場のひとつと言えるかと思います。例えば、プラントメーカーが養殖産業に参入したり、情報通信業が食の流通プラットフォームを創設したりするなど異業種参入が加速化しています。クライアントがこうした融合の動きを見せているのですから、我々コンサルタントも多様な専門家、多様な業界とのつながりを持ったメンバーがクロスして、一体となって取り組む必要が出てきたのです。

──新組織はどのようなメンバーで構成されているのでしょうか。

荻生 現在は、公共・社会インフラ、ストラテジックインパクトテクノロジー/メディア・エンターテインメント/テレコム金融サービスなどのセクターのメンバーが関わっています。有志を集めてやっていこうというのが基本スタイルで、食とはまったくの異分野に携わってきたメンバーも少なくありません。それぞれがいかに"熱い想い"を持っているか、ということが重要なのだと思っています。

私個人の話になりますが、実は料理が好きで、日頃から食材の産地や生産方法などに気を配っていました。また、子どもが重度のアレルギーを持っていたため、食について考える機会も多かった。コンサルタントの道を歩んでいくなか、食に対して何らかのかたちで貢献できないか考えていたのです。今回このような組織を立ち上げたことにより、私自身は自分が本当に向き合うべきテーマに帰着できたという感が強いですね。

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池尻 偶然ですが、私の子どももアレルギーを持っているんです。ごく身近なところに食の課題があったものですから、これらをいかにビジネスで解決できるかチャレンジしたいという想いがありました。一方で、クライアントの中には社会課題解決型の新規事業を立ち上げたいというニーズが増えていて、さまざまな参入領域が考えられますが、食というテーマは世界のメガトレンドを見ても非常に日本企業が貢献できる分野なんです。ビジネスとしても、社会貢献としても、ぜひトライしてみたいテーマだと思っていました。

政策レベルから食の在り方に取り組めるのがEYの強み

──「食の未来創造支援オフィス」では、どのようなプロジェクトが進行しているのでしょうか。

池尻 身近な例を挙げますと、高知県のカツオ・マグロの漁業経営の高度化をご支援しています。一次産業の中に入り込み、事業者さんと一緒に経営を変えていこうという取り組みで、漁獲量のデータなどを分析しながら操業効率を上げるツールを開発したり、商品の高付加価値化を進めることで商品単価を上げるための方策を提案したりしています。

また、他のプロジェクトとして、今は気候変動対応が大きな課題になっていますが、日本が持っている畜産(牛)由来のメタンガス排出抑制技術を海外に輸出するための調査も進めています。当チームの畜産の専門家に加え、EYのグローバルのメンバーや気候変動対応の専門家と連携しながら、フードマーケットとカーボンマーケットという2つの側面からビジネスモデルを構築していくという取り組みです。

荻生 EYはグローバルとの連携によって高度なソリューションを開発できることが強みのひとつです。また、日常的に政府や学術界の方々との交流があるため、政策レベルから食の在り方について取り組むことができるのも、大きなアドバンテージでしょう。

──そうしたEYの強みを生かして、今後挑戦していきたいテーマはありますか。

荻生 喫緊の課題としては、食品の輸出拡大があります。例えば、日本には神戸牛や近江牛や松阪牛など美味しい牛肉がたくさんありますよね。でも、世界の人たちが日本の「和牛」と聞いたとき、思い浮かべるのはせいぜい神戸牛ぐらいでしょう。地域ブランドによる産地間競争が発生していて、日本としてブランドが築けていない状況にあるのです。これからは、海外の消費者の嗜好をふまえながら、生産、物流、マーケティングなどオールジャパンで取り組んでいく必要があるでしょう。これは一事業者ではなし得ません。生産者、商社、物流会社ほかさまざまなプレイヤーが力を集結することになります。私たちコンサルティングファームというのは、何か資産を持っているわけではありませんが、こうしたプレイヤーをつなぎ、政策提言を行い、エコシステムを作り上げ、事業として軌道に乗せる──これが私たちの得意分野ですから、輸出拡大を含めできることはすべて、高い視座で取り組んでいきたいと思っています。

池尻 組織名に「未来」という冠をつけていますが、これからの未来を担う子どもにまつわる食の課題をビジネスで解いていきたいと考えています。それが結果的に、さまざまな産業の高度化につながれば素晴らしいですね。

先ほどお話ししたように、子どもが食べ物のアレルギーを持っているため、旅行や長期滞在の際にはとても苦労します。まずは食べられるものがあるか現地の飲食店をチェックしてから旅程を組み立てます。事業アイディアの一例にはなりますが、今はアレルギーの子どもが増えているので、3食の心配をせずに過ごせるストレスフリーなコンシェルジュサービスビジネスを事業化すれば、親御さんの課題解決と観光産業の高付加価値化が同時に実現できるのではないかと考えています。

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食への想いを胸に、EYでビジネスにつなげる

──どんなメンバーがチームに適していると思われますか。

荻生 やはり「食に対する想い」が重要ではないでしょうか。その想いは人それぞれ違うかもしれませんが、自然や命を大切に、食を大切にする気持ちを持っていてほしいです。コンサルタントとしてのスキルや知識不足については心配するに及びません。私たちが丁寧に教え、最大限にサポートしていきたいと考えています。

池尻 食べることが好きな人は向いているかもしれませんね(笑)。食というのは場と人をつなぐ機能があると思うんです。イギリスの大学には、異なる専門を専攻する学生たちが寝食をともにするカレッジというコミュニテイがあります。例えば哲学専攻と物理学専攻の学生が一緒に食事をとることで、新たな知が生まれる可能性があるというわけです。「食の未来創造支援オフィス」も、オープンマインドで、互いのビジョンに共鳴しながら地道に仲間をつくっていける方を歓迎します。

──EYで働くことに関心を持っている読者にメッセージを。

池尻 最近の学生や中途採用で入社される方は、社会に貢献したいという意欲を持っていて、意識が高い方が増えていますね。ただ、社会課題解決と大仰に構えるのではなく、自分ごととして手触り感のあるコトに置き換えていくことが大事だと思っています。あらゆる問題を自分ごととして捉え、解いていきたいという方と一緒に働けたらと思っています。

荻生 先ほど料理の話をしましたが、私は小学生の頃から料理をするのが好きだったんですね。本や漫画で有機農産物のことや醤油などの生産方法について知るにつれて、食に対する憧れが大きくなっていきました。大人になって金融の戦略コンサルタントの道を歩んできましたが、今まさに少年の頃の想いが現在につながっていると実感しています。自分一人の力では難しいことでも、EYには、さまざまな人と手を取り合いながら想いを実現できる環境が存在しています。ぜひ皆さんにも、ここで夢をかなえてほしいと願っています。

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