Smart Society Strategy(SSS)/国際金融都市構想の実現 Strategic Impactイニシアティブインタビュー 03

FinTech拡大を通じて、Society5.0を実現する

パートナー荻生 泰之

シニアマネージャー鈴木 顕英

シニアマネージャー白川 達朗

Society5.0の実現をミッションに掲げるSmart Society Strategy(SSS)チーム。荻生パートナー、鈴木シニアマネージャー、白川シニアマネージャーがFinTech拡大を通じたSociety5.0の実現について語ります。

Society5.0実現のため、資金循環を円滑化するFinTechを推進

「FinTech拡大を通じたSociety5.0の実現」について、活動内容をお聞かせください。

荻生

まず、SSSの活動からお話しします。SSSではSociety5.0を実現するための政策提言、戦略策定、コンソーシアム構築・運営などを行っています。中でも力を入れているのが、FinTech、ブロックチェーン、情報銀行、地域活性化、サプライチェーンです。

特にここにきて花開こうとしているのがFinTechです。ここ数年で法律や仕組みなどの環境整備が徐々に進んできたことに加え、新型コロナウイルスの流行も理由として挙げられます。

本来FinTechはモバイルを活用したものが多いのですが、日本人は現金、店舗、ATMなど物理的なモノを重視する傾向があり、モバイル決済やモバイルバンキングの利用率はそこまで高くはありませんでした。

しかし新型コロナウイルスの流行に伴い、日本人が現金などの物理的なモノを通じた接触を避けるようになったため、金融サービス全体がモバイルへと移行しつつあります。この流れはさらに加速し、これまでデジタル化の主流であった決済や融資分野から、資産運用や保険分野へと広がっていくでしょう。

鈴木

日本には個人が市場に出さずに抱えてしまっているいわゆる“タンス預金”や、定期預金として寝かせているお金が膨大にあります。日本の家計金融資産の保有量は世界第2位で、額にして実に1,900兆円にも達しますが、一方で投資比率は20%未満と世界屈指の低水準です。
これらを投資に回し、国民が自ら資産形成できること、そしてその投資により市場・産業を活性化することが必要と考えています。

日本人は投資に対してネガティブな印象を持っているためか、あるいはあまりよく知らないせいか、投資にお金を回していません。
投資されないから金融商品や金融サービスが発展しない、良い金融商品がないから投資しない。この悪循環をどこかで断ち切り、市場にリスクマネーが供給され、それが新たな産業や事業に投資されるようにする。このように資金循環を円滑にして、正のスパイラルに変えていく必要があります。

東京を「真の国際金融都市」に発展させ、日本全体の社会課題解決し、市場・産業の発展に貢献する

東京都で推進されている取り組みについて教えて下さい。

白川

東京都では2017年以降、「国際金融都市・東京」構想という政策目標を立ち上げ、それに向けたさまざまな取り組みを行っています。その一環として全世界から、先進的なFinTech企業や資産運用業者を東京に進出させるプロジェクトをEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EYSC)が受託しています。

さまざまな目的が含まれている政策ですが、まずは世界中で激化する都市間の競争において、東京を国際金融ハブとして復興させ、さらに発展させることを目的にしています。東京が常にアジアの首位であった時代は過ぎ去り、シンガポール・香港・上海といった都市との競争において、なぜ今東京に進出することがビジネスチャンスなのかを、政府と一体となって外国企業にアピールしています。

この取り組みの結果、40社以上の金融系外国企業が日本に進出を決めました。今年度は15社の誘致を目標としており、少なくない企業がコロナ禍にもかかわらず日本進出を検討しています。これまで世界の数万社とコンタクトし、数百社と面談を重ねて、日本に企業を進出させてきましたが、私たちはそうした「目利き」として活動しているのです。

さらに金融の発展を通じて、国民の資産形成、市場・産業への資金流通や、ESGへの貢献といったさまざまな社会課題の解決を目指しています。その効果は世界における日本のプレゼンスの維持だけでなく、地方を含む日本全体に波及効果をもたらすものです。このように私たちは「日本の社会・経済全体へ貢献する」という自負をもって取り組んでいます。

荻生

このプロジェクトは、ブーメランのように手元に戻ってきた感覚があります。というのも以前、東京都の国際金融都市のあり方について提言をさせていただいたことがあるためです。

私たちは数年先を見越して政治・行政の方々に政策提言を行っているので、提言したものがすぐに具現化するわけではなく、数年後に花が開くのはよくあることです。

さらにいえば私たちには、エコシステムパートナーとなる企業や団体と強いリレーションがあります。私たちは大手金融機関だけではなく、行政や地域金融機関、業界団体などともつながっています。
そのため今回のようなエコシステムを生かすプロジェクトは、他社にはできないでしょう。私たちは常に先駆者でありながら、実現まで支援することができるのです。

FinTechの取組は、都市づくり、地域づくり、国づくりをも射程に入れている

現在どのようなFinTechに注力していますか。

鈴木

社会的に今後大きな影響をもたらすものは2つあります。

一つはセキュリティトークンと呼ばれる金融商品です。これは暗号資産の技術を活用した資金調達手段で、2020年の法改正により認められた金融商品です。セキュリティトークンは柔軟な商品設計を安価に実現できるため、例えば独創的だがリスク評価が難しいベンチャー企業のように、資金調達が困難な企業や団体に資金調達の道を開くものです。
私たちは法改正に先立つ3年前からセキュリティトークンの有用性や将来性に着目し、金融機関や事業会社と共に研究を重ね、政策提言を行ってきました。セキュリティトークンによってイノベーション創出が促進されることを、これからも強力に推進したいと考えています。

もう1つは保険分野のFinTechであるInsurTechです。FinTechは2012年頃から日本をはじめ世界中で拡大してきましたが、決済や融資、資産運用など、銀行業・証券業に関わる領域が中心でした。デジタルでの新たなサービスを比較的構想しやすかったためです。しかし近年は、IoTやデータ分析など、各種のテクノロジーの成熟やFinTechのビジネスに関する知見の蓄積により、保険業の領域でも新たな価値創出を試みるInsurTech企業が多く登場しています。
遺伝子治療や自動運転の登場により、人々が備えなければいけないリスクも大きく姿を変えようとしている中、InsurTechに求められる役割は非常に大きいといえるでしょう。

今後のFinTechの展開をどう考えていますか。

荻生

私たちは、今述べたような社会の変化を金融業界だけの動きと捉えるのではなく、都市の活性化の起爆剤にしたいと考えています。つまり単にセキュリティトークンやInsurTechの企業が東京にいるだけでなく、産官学が連携してビジネス創出のためのエコシステムを形成することで「セキュリティトークンやInsurTechの中心地は東京」と世界から認識され、金融のエキスパートやエンジニアが集まり、それによって飲食や不動産なども含めた幅広い産業が潤って、東京がより暮らしやすい街に変わっていくということを目指しています。
また東京だけでなく、沖縄や北海道でもFinTechや情報銀行を活用した地域活性化の取り組みをしています。これらは新たな都市づくり、地域づくり、国づくりを目指すものでもあるのです。

社会を高い視点で捉え、社会やビジネスを変革したい人にぜひきてほしい

このイニシアティブには、どのような人材に参画してほしいですか。

白川

3つあります。1つ目は俯瞰的な視点を持つことができる人。高い視点をもった方と話をする機会が多いので、例えばBrexitや香港情勢など国際情勢まで踏まえ、物事を俯瞰的に眺めて、将来を展望できる人がほしいです。

2つ目はチャレンジを楽しめる人。ビジネスも行政も政治も刻一刻と状況が変わります。そうした変化に対して私たちは、常にアンテナを張りつつ、機転を利かせて、大胆かつ冷静に対処する必要があります。そういった刺激的な環境を楽しめる人は向いていると思います。

3つ目は勉強を楽しめる人です。私たちが相手にしているのは、さまざまな業種のさまざまな立場の人です。私たちは個別の専門性では各人に勝つことはできません。しかし仕事の性質上、互角に対話ができ、相手にインパクトを与えることが必要なので、いろいろなことを学び、総合力で勝る必要があります。

荻生

社会変革をしたい意思があるかも大切です。社会変革は個人では行えません。EYの総合力を生かして初めて可能になります。私たちのチームはEYの先陣を切る必要があり、社内外の人を意欲的に巻き込んでいかなくてはなりません。そのような社会変革マインドを持っている方が合うと思います。