
自動車・モビリティ・運輸・航空宇宙・製造・化学 セクター紹介
業界横断の座組づくりを仕掛け、
100年先のモビリティを実装する
100年に1度の変革期を迎えているモビリティ。大手自動車会社がその存在意義の再定義に苦心している今、コンサルタントが自らコンパスとなり、実現すべきこととは何か―。自動車・モビリティ・運輸・航空宇宙・製造・化学セクターを率いる早瀬 慶に聞きます。
乗用車は“商用車化”する
モビリティのトレンドをどう見ていますか?
かつて、人は生きるために「移動」し、モノを「移動」させていました。そこにやがて、暮らしや文化を支えるための「移動」、さらには楽しむための「移動」が加わりました。その結果、さまざまな画期的移動手段が発明され、生活範囲は爆発的に広がりました。
つまり、人類の発展は、ヒト・モノの「移動」とともにあったといえます。
一方、その代償として、環境破壊、交通事故・渋滞、交通難民、物流現場疲労などの社会課題も引き起こされました。これらは一刻も早い解決が求められています。
同時に、世の中はよりドラスティックに、スピーディーに変化しています。
“モビリティ”はその中でも、変化のスピードの速さと社会インパクトの大きさが圧倒的です。
2030年には地球の人口が約10億人増加し、総人口の約60%が都市に住む時代になるといわれています。移動需要はグローバルでまだまだ拡大していくでしょう。
先進国においては交通難民への対応がより一層求められるようになり、若年層を中心に、全世界的に「所有」から「利用」へ価値観が変化していきます。
また、自動運転の一般化により、「操る喜び」に対するニーズが低下します。
さらには、自動車、鉄道、船などの各種交通機関の調和が進んだ「モーダルミックス社会」になると、必要とされるモビリティの量は大幅に減少します。
その結果として、世の中の半分以上が“商用車”になると予測しています。つまり、乗用車の“商用車化”が起こるのです。

100年後を見据える
そのような中、当セクターの役割をどう考えていますか?
モビリティは単なる乗り物にとどまらず、ヒト・モノの最適な移動や、移動を通した街づくり、社会づくりそのものに昇華していくと考えています。
つまりモビリティは自動車産業だけの話ではなく、全産業一体で取り組む、また人類全体で取り組む、社会づくり・生活づくりなのです。
当セクターはそうした100年先の世界をつくる中心的役割を担うと考えています。
それはどのように進展するのでしょうか?
COVID-19の発生以前から、自動車業界では『100年に1度の変革』と謳われており、その象徴ともいわれていた「コネクテッド」「自動運転」「シェアリングサービス」「電動化」の頭文字を取ったCASE(ケース)は、今や自動車以外の業界でも使われる共通語として定着しています。
モビリティトレンドと相まって、新しいプレーヤーの積極的な参入を促しながら、新たな市場形成の兆しが見られます。
そのような中、我々のメインクライアントである自動車メーカーをはじめとする自動車プレーヤーは、『100年に1度の変革』パラダイムシフトを乗り切ること、既存ビジネスモデルからの脱却、そして将来に向けた存在意義の再定義に苦心しています。
このような先の見通せない時代に求められるのは、地図ではなく、コンパスです。当セクターは、世の中のコンパスとなり、クライアントのみならず、社会をリードしていくことがミッションであると考えています。
その先に、移動を通じて「安全・安心」「環境回復」「ゼロ交通弱者」「社会コスト最小化(負担軽減)」の豊かな社会・生活を実現していきたいと思います。
それは同時に、日本の自動車関連プレーヤーの“勝ち残り”の支援することでもあります。
そのためには、協調領域と競争領域を明確化し、協調領域における業界内・業界横断の”座組み”を提言・構築することも求められます。
豊かなモビリティ社会の実現の加速には、場合によっては、EYの競合と互いに手を取ることも厭いません。
“座組み”の提言において、どのような切り口があり得るでしょうか。
日本のモビリティ環境には世界でも稀な特徴があります。
生活者・観光客、海・空・陸のモノ/ヒト流の基盤、歴史・芸術・経済・学術等に加え、超高齢化対応など、世界に先駆けて複合的に考える(べき)素地があります。
また、パンクチュアルなモビリティタイムテーブルや移動手段、業界をまたぐ決済手段の浸透などを有しており、世界をリードする大きなポテンシャルを持っています。
世界に先駆けてモビリティに関する社会課題に対応し、モデルを確立することは、世界のモビリティ社会に寄与するだけでなく、アニメ等のソフトコンテンツと同様に、産業の輸出化も実現し得るのと考えています。