2022.01.25
コンサルタントが変える未来

官民連携で考える サステナブルシティの創り方

マネージャー 酒見

2050年、日本の地域の6割以上で人口が半減し、そのうち2割が無居住化すると、国土交通省のグランドデザインが警鐘を鳴らしてから早7年。今ある地域消滅の危機から抜け出し、持続可能な都市とまちを未来に残すためにコンサルタントにできることは何か。これからのインフラ整備・運営に欠かせない官民連携のつなぎ役として、「長期的価値(Long-term value)」の視点から参画し、「サステナブルシティ」創出の支援に大きく貢献しています。

人口減少時代の「持続可能なまちづくり」

――今回のテーマは「まちづくり」です。今どんな課題があるとお考えですか。

日本の人口がどんどん減っていくなかで、「持続可能なまち」をどのようにして実現していくか。私が所属する不動産/ホスピタリティ/建設セクターでは、それを最大の関心事として活動を進めているところです。

都市やまちの姿というのは国・地域によってさまざまです。例えば、ヨーロッパでは都市と農村が明確に区切られて、中心市街地を持つ中小の都市が点在し、その間に田園地帯が広がるような光景がよく見られます。日本の場合はアメリカに近く、市街地がだんだんと外側に広がって郊外になっていく形、どこまでもまちが続くようなイメージです。

そこで考えなくてはならないのが、インフラの維持管理とコストの問題です。たくさんの人が暮らす市街地であれ、人が少ない郊外であれ、一度作ってしまった道路や上下水道、公共施設等のインフラは、利用者がいる限りコストがかかり続けます。であれば、本来は狭い範囲にまちの機能を集約して、できるだけ効率よく使ったほうが、維持管理の労力も費用も低く抑えられるはずです。

「都市は人類最高の発明である」とも言われますが、日本では、戦後の高度経済成長期で急激な都市への人口集中、さらにそれが過剰に進んだ結果として、今度は都市の中心部から人があふれて郊外に向かう現象が日本中で発生し、似たようなニュータウンや郊外都市ができあがり、それに合わせて、インフラの整備も一挙に進みました。そして今、東京への一極集中、少子高齢化に伴って、膨大な老朽化したインフラと人口密度の低い郊外地域ができてしまい、その維持管理が問題となっているわけです。一方、これらを管理してきた自治体は、ヒト・モノ・カネが不足し、老朽化や機能不全に歯止めがかからず、上下水道料金の高騰や図書館や体育館等の公共施設がなくなる等の懸念もあります。

――どのような対策がとられていますか?

国土交通省は2014年に発表した「国土のグランドデザイン2050」の中で、「コンパクト+ネットワーク」という概念を打ち出しています。人口減少下で効率よくサービスを提供するには都市機能の集約化(コンパクト化)が不可欠ですが、市町村合併等が進む中、市域に複数の集約拠点ができつつあります。これらを無理に一箇所に集約するのではなく、交通網やネットワークで結んで圏域を拡大し、人・モノ・情報の交流を促進する、という考え方です。

また、インフラを経営するという観点から、中長期的なインフラ、公共施設のあり方について自治体が計画を策定する取り組みも進められています。総務省では上下水道等のインフラを運営する自治体に対して長期的な財務シミュレーションを含めた経営戦略の策定を推進しており、同様に図書館や体育館等の公共施設についても、施設統廃合や長期的な必要コスト算定を含めた公共施設等総合管理計画の策定を自治体に対して要請しています。これらは、民間企業同様の経営視点を公共インフラに導入する考え方です。

EYが考える官民連携の新しいまちづくり

近年こういう文脈では、AIやロボット等の先進IoT技術を活用した合理化、サービス向上を行うスマートシティの構想がすぐ頭に浮かびますが、まちの課題はただデジタル化するだけでは解決しません。

そもそもまちは誰が「つくる」ものでしょうか。まちづくりには、公共だけでなく、企業、市民、地域団体等多くの主体が関与しています。関係者の期待一つ一つについて全て叶えることはできず、全体最適となる臨界点を見つけ出し、そこに向かってビジョンや役割分担の共有、利害関係の調整や合意を図っていく必要があります。「未来に残したい持続可能な都市/まち」をつくること、それこそが重要であるとの視点に立って、私たちEYはIT偏重になりがちなスマートシティから多様な関係者が有機的に連携する人間中心のサステナブルシティへの転換を提唱しているところです。

それには、まちづくりに絡む政府や自治体、企業、市民などさまざまな利害関係者間の調整と合意形成、官民の役割分担といった作業・役割が必要になります。

――具体的にはどのようなことでしょうか。

さらなる官民連携の推進は必要不可欠です。
公共サービスにおける官民連携のスキームをPPP(Public Private Partnership)といいますが、その一環で、民間の資金とノウハウを生かして公共施設の設計から建設、完成後の維持管理や運営までを委託するPFI(Private Finance Initiative)が普及してきています。

これまでインフラPPPの分野では、施設の新設を中心とした事業が我が国では主に進められてきました。これは、設計・施工・維持管理を一体的に民間に委ねることによるコスト削減やサービス向上の効果を狙ったものですが、設計・施工が事業に占める割合が大きなハコモノ事業が多く進められてきました。

私たちはこの流れを転換するために、インフラの運営や維持管理を重視し、民間ノウハウによる集客の促進や新規収入源の確保等の部分に民間の知恵を活用する新たな取り組みを提唱してきました。

その最たるものが、コンセッション(公共施設等運営権制度)といって、既存のインフラ施設について所有権は公的機関に残したまま、運営権を一定期間、民間事業者へ売却する方法です。それによって、空港や上下水道などの分野で、民間の経営ノウハウや創意工夫を最大限生かして、増収やコスト効率化を実現する仕組みを、海外のEYの知見も生かしながらゼロから整備してきました。もちろん、公的機関によるKPI(重要業績評価指標)に沿った運営状態のモニタリングも必要で、それも含めた仕組みづくりも併せて推進してきました。

インフラを「造る」時代から「経営」する時代への転換という言い方もできるかもしれません。

モノとコトを結ぶ公共事業の経営戦略

――コンサルタントとしての支援のポイントについてお聞かせください。

最たるものが公共と民間の間の違いですが、民間事業者の間でも、インフラには多くの事業者が関与しています。特にインフラという「モノ」を「造る」業界とインフラ事業を「コト」として「経営」する業界では、事業の取り組み方から業界用語まで、様々なギャップが存在しており、これをどう翻訳し、通訳してつなぐかが重要だと思っています。

特に、インフラを「造る」時代では、公共の発注に従って民間は要求通りインフラを「造る」ことが求められてきました。インフラを「経営」する視点では、インフラをめぐるヒト・モノ・カネを総合的に捉えて、公共と民間が真のパートナーシップの中で、インフラ経営を進めていくことが求められます。このような大きな事業環境の変化の中で、関係者全てが新しい局面に遭遇する中、それぞれの状況、利害関係を踏まえて間に入って通訳し、とりまとめていく存在が必要となってきます。

例えば水道で考えてみましょう。人口減少やライフスタイルの変化や節水器具の進化により水の使用量は減少し続けており、水道局の売上となる水道料金収入は漸減しています。このような状況で、水道管が破裂するような老朽化はどんどん進行しています。水道料金を大幅に引き上げなければ経営が維持できませんが、社会では、水道は蛇口をひねれば出るのが当たり前という意識が圧倒的であり、水道が実は経営危機にあり、少しでもコストを抑えるような改革が必要であるということは意識されていません。その状況を打開するには、数字に基づく意思決定や判断が必要であり、事業の状況を見える化した上での経営戦略といったものが必要となるでしょう。そうした問題意識から、EYは社会にダイレクトに訴える取り組みを実践しており、「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?」という、全国の全自治体が、このままでは水道料金を将来どれくらい引き上げないと維持できないのかを推計し、公表しています。この、EYオリジナルの社会提言活動は、関係者が同じ方向を向いて進むためのエビデンスを常に社会に提供するという意味で、EYが重視しているポイントの一つになります。

語る酒見の画像

――どのようなチーム編成でコンサルティングに臨むのでしょうか。

チーム編成こそがEYの強みだと思っています。種々多様な人材によるワンチーム体制です。メンバーのバックグラウンドは十人十色で、私のような一級建築士、また、技術士、公認会計士、ファイナンス、エネルギー、不動産の専門家もいれば、空港や上下水道の整備に携わった経歴のある人間や、国や地方の公務員出身者もいます。また、海外のインフラ事業の最新事情に精通したメンバーもいます。まさしく官と民が融合したチームは雰囲気も明るく、みんながお互いに敬意を払って専門家として尊重しています。

これらの知見を融合すると、インフラ関係企業や自治体の戦略策定、意思決定、官民連携のスキームづくり、契約や財務、事業評価など、およそ公共・公益インフラに必要なすべての領域がカバーできます。すなわち、官と民、モノとコトのそれぞれを内包して、ワンパッケージで対応できる体制が出来上がっているわけです。

これは他社にはあまり見られない環境だと思いますし、そうした縦横無尽に展開可能な布陣によって官民連携の新しい仕組みづくりに動けることが、このチームで働く一番の醍醐味だと思っています。もっと言うと、戦略や仕組みだけでなく、EYの豊富なリソースを活用すれば最終的な事業のお手伝いまでも一気通貫で担うことができ、これは大きなアドバンテージと言えます。

それが可能であるのも、EYというグローバルな組織全体が「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」をパーパス(存在意義)として、企業や社会の長期的価値の創出を求めてあらゆる活動を展開しているからに他なりません。官民連携もまちづくりも、決して短期的利益によって動くことはできないのです。

社会を支える仕組みをつくりたい、日本のインフラの未来を創りたい、そうしたモチベーションのある方ならバックグラウンドは問いません。ほかの人とは違う経験こそわがチームで求める人材です。ぜひEYへジョインしてください。

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参考資料

国土交通省 国土のグランドデザイン2050
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk3_000043.html

国土交通省 コンパクト・プラス・ネットワーク
https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_ccpn_000016.html

総務省 公営企業の経営
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/kouei_ryui.html

総務省 公共施設等総合管理計画
https://www.soumu.go.jp/iken/koushinhiyou.html

内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)
https://www8.cao.go.jp/pfi/

EY Japan 人口減少時代の水道料金はどうなるのか? 研究結果(2021版)を発表
https://www.ey.com/ja_jp/news/2021/03/ey-japan-news-release-2021-03-31

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