EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EYSC)

 
2023.02.07
コンサルタントが変える未来、パートナー

Future Consumer Indexから読み解く。消費財・小売セクターの未来予想図

パートナー 平元 達也

EYが全世界で定期的に実施する消費者動向調査「EY Future Consumer Index」。2020年3月に始まったこの調査は回数を重ね、コロナ禍で沈み込んだ消費者心理とそこからの回復、未来に向けての新たな行動の兆しを刻む貴重なデータ集となっています。消費財・小売セクターのコンサルタントはそこから何を読み解き、顧客企業と業界の課題解決にどう活かすのでしょうか。EY Japan 消費財・小売マーケットセグメント・リーダーを務める平元に聞きました。

「価格重視」「環境重視」の傾向を強める世界の消費者動向

──消費者動向調査「EY Future Consumer Index」を定期的に実施されているとのことですが、どのような調査でしょうか。

平元 世界の消費者動向をタイムリーに把握し、その情報発信を通じて業界でのEYのプレゼンスを高めること、また、情報およびその分析結果を顧客企業への提言やサービスの品質向上に活かすことを目的に、EYが日本を含む25カ国で同時に実施している調査です。2020年3月から約4カ月に一度の頻度で継続しており、昨年12月発表の最新版で11回目を迎えました。

人々が消費行動において、今、何を重視しているのかを多角的な視点から捉えるために、私たちは5つのパラメーターを設定して分析しています。消費者が、① Affordability(値ごろ感)、② Planet(地球環境)、③ Experience(顧客体験)、④ Health(健康)、⑤ Society(社会)にどのような優先順位を付けて行動しているかを明らかにします。

グローバル市場におけるこれらの動向は、その時期の景気や政治情勢などさまざまな要因により、常に変化を重ねていくものです。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの発生とこの調査の開始が重なったのは偶然に過ぎませんが、奇しくもこの激動の3年間における消費者行動の変化を映し出す非常に重要な役割を果たすことになりました。

コロナ禍が始まった当初、人々は身の安全と健康を守ることを最優先し、消費行動や生活様式を一変させました。やがて、外出制限などの行動抑制策が経済に深刻な影響を与え始めると、商品・サービスの価格や家計の管理が最大の関心事となります。さらに、経済活動が徐々に再開して人々の生活が落ち着きつつある中では、環境意識の高まりからサステナビリティを重視する層が存在感を増してきています。

──地域によっても動向は異なると思いますが、日本の場合は世界と比べてどうでしょうか。

平元 そうですね。まず最近の世界の状況ですが、2023年現在、コロナ禍以前の生活に戻りつつあるといっても、深刻化する地政学的リスクや世界的な物価高騰と景気の後退懸念もあり、再び「値ごろ感」が、人々の将来に対する不安を反映し消費行動における最優先事項として上昇しています。その一方で、この調査が始まった頃からの傾向として「地球環境」への関心が年々高まっています。たとえコロナ禍で厳しさを増す家計であっても、サステナブルな商品を選択しようとする消費者が増え続けているのは非常に興味深いことです。

これに対して日本の場合、価格重視の傾向がより強く表れているのが大きな特徴です。第11回調査では「値ごろ感」優先の消費者割合は41%で、グローバル平均の25%と大きな差が出ました。昨今のインフレ局面に賃金アップが追い付かず、生活防衛の意識が強く働いているのだと思います。反面、「地球環境」優先の割合は世界で最も低い12%(グローバル25%)で、「健康」優先は逆に世界で最も高い24%(グローバル17%)となりました。この背景には、日本が世界でも有数の高齢化社会であることが影響していると思われます。ただ、日本においても若者を中心にサステナブルな消費行動に対する意識は上昇傾向にあります。

わくわくするバーチャル体験を望む世代に目を向けるとき

──そうした消費者動向を踏まえると、消費財や小売関連の企業には今後どのような対応が求められるといえますか。

平元 端的にいえば、地球環境に配慮したサステナブルな商品・サービスをいかにして既存のラインナップと遜色ない形で提供できるかが、大きな鍵となるでしょう。遜色ないというのは品質において、また価格においても、ということです。これは値ごろ感重視の日本市場においては特に重要なポイントだと考えています。

説明をする平本

それと同時に、もう1つ注目していただきたいのが「顧客体験」です。実は価格重視、環境重視と並んで体験重視の消費者も、世界的な傾向として顕著に高まりを見せているのです。その背景に、長く続いた巣ごもり生活、行動抑制から解き放たれつつある中で、そろそろ消費行動を楽しみたいという欲求の高まりがあることは容易に想像できます。ですが、すべての人が以前の生活スタイルに戻りたいか、つまり屋外に出て実店舗でショッピングを楽しみたいかというと必ずしもそうではありません。自宅での消費行動に対するニーズは、平時に戻ったとしても現在に近い水準で定着すると見られています。

そこで浮上してくるのが、バーチャル空間での体験的な消費行動の機会、これをどのように提供できるかという命題です。今までのように単にオンラインで買い物をするeコマースに留まらず、例えばメタバース空間に身を置いて、まるで実店舗のようなショッピングを疑似体験できる仕組みが急速にニーズを高めています。さらには、実店舗での疑似体験に留まらず、例えば、ゲーム的要素を持つショッピング体験の提供等の差別化要因を持つサービスが増えていくように思います。

これらはまだ"勝ち"パターンモデルの定まらない新しい領域ではありますが、何年か先の消費者市場で自社のプレゼンスを高めるために、企業は今からしっかりと認識して、どのようにチャレンジするか検討すべき課題の1つではないでしょうか。

──未来に向けて認識すべき課題を明らかにすることは、コンサルタントの重要な役割といえますね。

平元 そういう意識は極めて重要です。直面する現状の課題はもちろん、5年後、10年後、さらにはその先を見据えた成長戦略の構築やアクションプランの策定においてクライアントを支えることが私たちの使命です。次の時代の世界経済、消費市場を牽引するZ世代やその後に続く世代の人たちは、どのような生活スタイルや消費行動を体験することを望むのか、例えばそんな発想を起点に、商品や販売手法、マーケティングのあり方を顧客企業とともに探っていくことになります。

とはいえ、必ずしも完全に新しい事業を展開しようということではありません。今あるコアビジネスを中心に、既存の強みを活かしながらどう次の時代に対応するか、そこが基本になるでしょう。商品・サービスを消費する側は、既存のeコマースではもう飽き足らなくなっています。仮想現実の世界で、アバターにお気に入りのブランドのスニーカーを履かせ、現実世界では存在しないようなクールなクルマに乗って、ゲーム的要素を持った移動そのものを楽しみながら、ショッピングに出かける、そんな新しい体験を望んでいる世代が確実にいるということを、直視すべき時期に来ているのだと思います。

戦略策定からその実行までをシームレスに支援するEYの強さ

──消費財・小売企業をサポートするうえで、EYならではの強みはどこにありますか。

平元 組織の強みと人材の強み、両方の面があると思っています。組織としては、M&A支援に代表される戦略及びトランザクション部門と、産業別・機能別に網羅されたビジネスコンサルティング部門を1つの社内に融合させた、数少ないコンサルティングファームであること。EYを含む世界4大会計ファームのうち、この体制を有する組織は他にありません。

この体制の強みは、企業経営の上流部分に位置する経営課題に対して戦略的なコンサルティングを展開すると同時に、そこで特定された個々の経営課題に対して、具体的なソリューションを提供する段階への展開をシームレスに実施可能とすることです。この一体感は、同じ組織でなければなかなか得られるものではありません。

人材の強みでというと、性別や年齢層、国籍はもちろん、バックグラウンドも多岐にわたる多様性です。私自身、M&Aアドバイザリーの領域で消費財・小売セクターやテクノロジーセクターを長く見てきた経験がありますし、同じチームの中にプライシング政策の専門家や、サプライチェーン、人事・人材開発、IT関連のバックグラウンドを有する多様なコンピテンシーを持つ仲間がいます。

そういう専門性を有する人材がなぜ、消費財・小売チームに籍を置くのか。それは、消費財企業、小売企業の成長を通じて人々の生活を豊かにしたいという我々セクターのパーパスへの強い共感に加えて、専門領域の強みを持ちながら業界に対する知見を深めることで、クライアントにより寄り添って課題解決に立ち向かえると考えるからです。私たちのような、業界に特化したセクター部門で働くコンサルタントの醍醐味はそこにあります。

──最後に、この領域でコンサルタントを目指す方にメッセージをお願いします。

平元 クライアントや業界が今まさに直面している課題を見つめ、また近い将来に我々コンサルタントが直面するであろう課題を読み解き、その解決策を必死に考え、全力で実現する。こういう仕事を純粋に楽しいと感じていただける方であれば、コンサルティングの経験は問いません。我々のクライアントはB2C企業が中心です。日常生活を通じ、皆さん消費者目線はお持ちでしょうから、業界の知見を深めるには難しい業種ではないと思います。また、必要なスキルや知見は経験豊かなメンバーが万全にフォローしますので、ご安心ください。ぜひ、我々と一緒にクライアントの成長を支援し、世界中の人々の生活を豊かにするという我々のパーパスを実現しましょう。

参考リンク:

EY Future Consumer Index
第10回調査:危機的状況に消費者は対応している
第11回調査:5つの消費者セグメントを理解する

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